生活習慣病

主な生活習慣病

高血圧

正常値とされる血圧の数値よりも常に高い状態が持続している場合を高血圧と言います。そもそも血圧とは血液が心臓より送られていく際に血管壁にかかる圧力のことです。日本高血圧学会によると、収縮期血圧（最高血圧）が140mmHg以上、または拡張期血圧（最低血圧）が90mmHg以上に維持されている状態のことを言います。

血圧が正常値よりも常に高く維持されていると、心臓から各器官へと血液を送っていく際に負荷を必要以上にかけなければならず、血管壁も影響を受けるようになります。やがて、その圧に耐えようと血管自体は厚みを帯び、硬化するようになります。これが動脈硬化を招き、やがて血管内が脆くなります。これが血管狭窄や詰まりなどの原因となって、重篤な合併症（脳梗塞、心筋梗塞、心不全、腎不全、閉塞性動脈硬化症 など）が起きるようになるのです。ちなみに高血圧の状態になっても何らかの症状が現れるということは、ほぼありません。このことから病状を進行させやすくなるわけですが、血圧が急に上昇する場合に頭痛、めまい、肩こりなどの症状がみられることがあります。

白衣高血圧

診察室での血圧が140/90 mmHg 以上であっても、診察室外血圧が135/85 mmHg 未満である状態を白衣高血圧といいます。診察室測定で高血圧と診断された患者の10〜30％が白衣高血圧と言われており、 当院では可能な限り家庭血圧を測定して頂くようにしています。また血圧測定で大事なことは、測定は1回測定では本来の血圧より高くなることが多いので、診察室では連続2〜3回測定しています(家庭でも最低2回以上は連続測定を指導)。

治療について

治療の目的は合併症を起こさないための血圧のコントロールになります。まずは生活習慣の改善を行うようにします。その内容ですが喫煙者の方は禁煙を実践します。食事面では減塩（１日６g未満）、利尿作用のあるカリウムを多く含む野菜、海藻、果物類を摂取していきます。そのほか節酒などもしていきます。また運動も血圧を下げる効果があるので、これも取り入れていきます。その内容は有酸素運動が最適とされ、ハードな運動量は必要とせず、1回30分程度のウォーキングで充分ですが、継続的に行うようにしてください。なお、無酸素運動を激しくすると血圧は上昇することがあるので逆効果です。いずれにしましても運動をする前に一度医師とご相談ください。

上記の生活習慣の改善だけでは、血圧が下がっていかないということであれば、併行して薬物療法も行っていきます。主に降圧薬などが用いられるわけですが、種類はいくつかあります。患者様の高血圧の症状によって、1つの薬で済むこともあれば、複数以上処方されることもあります。

糖尿病

血液中に含まれるブドウ糖（血糖）の濃度を血糖値と言いますが、この血糖値が基準とされる数値内に治まっていない状態を糖尿病と言います。そもそも血糖値は、食事をする、糖分を含んだジュースを飲むといったことで上昇するわけですが、その際に膵臓で作られるホルモンの一種インスリンが分泌されることで、再びバランスがとれた状態に戻るようになります。

このブドウ糖とは、脳や体を動かすエネルギー源となるもので、細胞に取り込まれることで、そのような働きをするわけですが、ここにインスリンが関わっています。このインスリンが作用不足を起こすと、細胞にブドウ糖が取り込まれずに血液中でダブつくようになって、血糖値が上昇するようになるのです。これが糖尿病発症のメカニズムです。また血糖値が上昇したままというのは、常に血管が損傷を受けている状態でもあります。これによって、まず細小血管が障害を受けるようになるのですが、これらが集中している網膜、腎臓、神経では合併症が起きやすいことから、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害は糖尿病三大合併症と呼ばれています。さらに大動脈では動脈硬化が起きやすくなるので、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症なども発症しやすくなります。

1型糖尿病と2型糖尿病

糖尿病発症の原因は主に2つあると言われています。ひとつは、インスリンを作成する膵臓のβ細胞が主に自己免疫疾患によって破壊され、それによってインスリンがほぼ分泌されていない状態です。もうひとつは、日本人の全糖尿病患者の9割以上を占めるとされる2型糖尿病です。これは、日頃の不摂生（不規則な食事、過食、運動不足、喫煙・多量の飲酒、過剰なストレス など）の積み重ねによって膵臓が疲弊してしまうことで、インスリンの分泌が不足、あるいはその量が充分でも効きが悪い状態になっています。

なお1型、2型以外にも別の病気（内分泌系疾患 など）や薬（ステロイド薬）の影響などによって発症する二次性糖尿病、妊娠中は高血糖状態になりやすいことからみられやすいとされる妊娠糖尿病などもあります。

よく見受けられる症状ですが、とくに2型糖尿病では、何らかの自覚症状が初期から現れることはなく、病状がかなり進んでから、頻尿・多尿、喉の異常な渇き、全身の倦怠感、食欲はあるものの体重の減少といった症状がみられるようになりますが、この場合は、かなり進行している状態とも言えます。また1型糖尿病の患者様では、急激にインスリンが分泌されなくなることがあるので、それによって脱水症状、嘔吐、意識障害、昏睡などの症状がみられる糖尿病ケトアシドーシスがみられることもあります。

検査について

糖尿病が疑われる場合、診断をつけるための検査として血液検査を行います。主に血糖値とHbA1cの数値を確認し、基準値を上回るかどうかをみていきます。診断基準については、次の通りとなります。

検査の結果、①と②の両方とも基準の数値を上回っていることが確認されると糖尿病と診断されます。また①と②どちらかのみが基準値を超えていれば「糖尿病型」と判定され、再検査となります。また、その再検査でどちらか一方のみが超えているとなった場合も、糖尿病と診断されます。

また当院では、かくれ糖尿病と呼ばれる「血糖値スパイク」（食後2時間以内の血糖値が基準値を超えて高くなるのが特徴で、空腹時血糖検査では見つけにくいタイプで大血管転位を起こしやすくなります。）も見逃さないよう、早期発見・早期治療に努めています。

治療について

検査結果などから、患者様がどのタイプの糖尿病であるのかをしっかり把握したうえで、その患者様に合う治療を行っていきます。

1型糖尿病と診断された患者様につきましては、体内でインスリンが不足している状態ですので、体外からインスリンを補充していくインスリン療法（インスリン注射）となります。

一方、2型糖尿病の患者様は、膵臓が疲弊した状態でインスリンが少ないながらも分泌されている状態ですので、生活習慣の改善（食事療法、運動療法）から始めていきます。

食事療法では、一日三食を規則正しく、適正なエネルギーの摂取量を守ります。食品交換表（糖尿病食事療法のための食品交換表：日本糖尿病学会 編・著）を用いると容易にカロリーなどの調整が行えるようになります。食事では、食物繊維の多い食品、緑色野菜、魚を積極的にとることが勧められます。また運動によって、血中のブドウ糖を減少させることができるので、これも取り入れます。その内容は、息が弾むくらいの有酸素運動（1回30分程度のウォーキング など）で問題ないとされていますが、できるだけ毎日行うのが理想的と言われています。

なお生活習慣の改善だけでは、血糖コントロールが困難であれば、薬物療法も併行して行います。この場合、経口血糖降下薬を使用するわけですが、種類はいくつかあります。当院では、まず糖尿病のタイプを把握【①インスリン抵抗性(肥満の人に多い高インスリン血症)、②血糖値スパイクの有無(空腹時血糖測定、食後すぐの血糖の測定)】をしてから、それぞれに合った経口血糖降下薬を使用していきます。それでも血糖のコントロールが難しいということであれば、インスリン注射（インスリン療法）を使用していきます。

このほか、セカンドオピニオンとして客観的な意見が聞きたいという場合も遠慮なくお問い合わせください。

脂質異常症

血液中には脂質が含まれるわけですが、そのうちLDL（悪玉）コレステロールや中性脂肪（トリグリセライド）の数値が基準とされる数値よりも高い、HDL（善玉）コレステロールの数値が基準とされる数値よりも低いという場合に脂質異常症と診断されます。なお診断基準につきましては、以下の通りです。主に3つのタイプに分類されます。

• LDLコレステロール値≧140mg/dL（高LDLコレステロール血症）
• 中性脂肪≧150mg/dL（高トリグリセライド血症）
• HDLコレステロール値<40mg/dL（低HDLコレステロール血症）

脂質異常症も他の生活習慣病と同様に自覚症状が現れませんので、なかなか発症に気づきにくいとされています。そのため患者様の多くは、定期的に行う健康診断の結果を見て、LDLコレステロールなどの数値の異常を指摘されて気づくということがほとんどです。それでも、何の症状も現れないことから放置を続けることで動脈硬化を招き、さらに虚血性心疾患（狭心症、心筋梗塞）や脳血管障害（脳梗塞 など）といった重篤な合併症を引き起こしてしまうことも少なくありません。

なおコレステロールや中性脂肪は体に必要不可欠なものです。例えばコレステロールは、細胞膜を構成する成分のひとつであるほか、胆汁酸の材料になりますし、中性脂肪は皮下脂肪となって蓄えられるという役割があります。ただ、LDLコレステロールが体内で過剰になれば、これが血管壁に蓄積されるようになって、やがて血流を悪化させる、血管自体が脆くなるとおった動脈硬化を引き起こし、さらに放置が続けば上記なような重篤な合併症を発症させるようになるのです。また中性脂肪が増え過ぎればLDLコレステロールは増えるほか、HDLコレステロールが少ないと、血管内に蓄積された余分なコレステロール（LDL）を回収できなくなって、動脈硬化を招きやすくなります。

発症の原因については、主に原発性脂質異常症と二次性脂質異常症の2つがあると言われています。前者は、遺伝的要因によって引き起こされるタイプで、脂質を細胞内に上手く取り込むことができなくなることで起きると言われています。二次性脂質異常症は、別の病気（糖尿病、甲状腺機能低下症、肝臓病、腎臓病 など）や薬の影響（ステロイド薬の長期投与など）、肥満、アルコールなどが原因となって引き起こされます。
中性脂肪(トリグリセライド:以下TGと略す)が高い高TG血症は食事療法と運動療法の反応が良好です。食事は総エネルギー摂取量と糖質、脂質の摂取量の適正化です。また肥満の人は減量、飲酒量の多い人は減酒・禁酒が効果的です。これらの生活改善でも効果不十分な場合は、薬物治療もしていきます。

治療について

脂質異常症は主に3つのタイプに分類されますが、いずれの場合であってもLDLコレステロールの数値を下げることから始めていきます。この数値を下げることによって、HDLコレステロールやトリグリセライド（中性脂肪）の数値も正常になっていくとされているからです。

治療に関してですが、まず生活習慣の改善から始めていきます。食事面では、コレステロールが多く含まれる食品は避け、野菜を積極的に摂取していきます。また運動をすることは、トリグリセライド（中性脂肪）を減らし、HDLコレステロールを増やす効果があるので、これも取り入れていきます。その内容は、息が弾む程度の有酸素運動を1回30分程度（ウォーキング など）で充分ですが、できるだけ継続的に行うようにしてください。なお運動を始めるにあたっては、一度医師に相談するようにしてください。

上記の生活習慣の改善だけでは、LDLコレステロールの数値が下がらないという場合は、これらに併せてLDLコレステロールの数値を下げる効果がある薬も服用していきます。